2002年1月号
  院長より   
  
 あけましておめでとうございます。
昨年は狂牛病や同時多発テロなど暗いニュースが目立ち、日本経済も落込み、失業率が
上がっているなど先行きに不安を覚える一年になってしまいました。今年は少しでも良い年になればいいのですが・・・。

  さて今年は診療報酬改定の年に当たり、すでに新聞などでもいろいろな案について書かれていますから、皆様もある程度は
ご存知だろうと思います。しかし三方一両損などと名裁きの言葉に惑わされ、本質が隠れてしまった気がします。患者負担が
増加すると受診者数が減少しますし、今回は薬価のみならず、診療報酬そのものの引下げも検討されており、これが実現
しますと医療機関の収入が大幅に減少します。収入が減少すると経費を削ることになりますが、人件費ぐらいしか削る経費が
ありません。人件費が削られるとただでさえ職場環境が悪いと言われているのに、より給料は安く忙しくなるので良い人材が
集まらなくなります。現在イギリスがサッチャー首相の医療費抑制政策によりその状態になっており、医療従事者を外国人
労働力に依存したことが社会現象となり、ブレア首相は医療費拡大政策に変更しました。しかし一度離れた求心力は容易
には元に戻りません。日本では産業としての医療はまだ成長していますから、イギリスのようになってしまう前に対策を立て
れば間に合います。景気を立て直す可能性のある産業としての医療を失速させないようにしなければなりません。
      
  皆様の応援をいただけるようお願いいたします。
  鼻水・鼻づまり    
 
 鼻
は、息をするための入り口で、息を吸うときや吐くときの空気の流れを調節したり、吸い込む空気を暖めて、湿り気を
与えたり、くしゃみによって入ってきて欲しくないものを外にだす働きがあります。
  鼻毛は、空気中のゴミなど(鼻くそになる)を吸いつけて、肺に入ってくる空気をきれいにします。鼻水の中に含まれる酸素や
免疫グロブリンの働きによって、細菌ウイルスなどをやっつけてくれます。鼻はさまざまな外からの刺激を一番最初に
受け付けるために炎症が起こりやすいのです。

  鼻水がでる時には 風邪 鼻炎 蓄膿症などの病気が考えられます。透明な鼻水が少しでるだけで、鼻の奥のほうが
くすぐったい程度で、熱もなく、食欲もあるようでしたらお家で様子をみていても大丈夫でしょう。ねばっこい黄色や緑色の
鼻汁がでる
ときは細菌感染の疑いがあります。
  鼻の奥と耳の間は耳管というものでつながっているので、子どもの場合は大人に比べてこの管が短いので、細菌が耳に
侵入すると中耳炎や、また別の経路で副鼻腔炎を起こしたりしますので、早めに受診してください。


【One Point! 副鼻腔炎?蓄膿症?】

 蓄膿症と一般に言われているものは副鼻腔炎のことです。それではまず鼻の構造からお話ししましょう。
 頭の内部には、鼻や目を取り巻くようにして大小いくつかの骨の空洞があり、これを副鼻腔と呼んでいます。蓄膿症とは
この副鼻腔の炎症の総称で、専門的には「副鼻腔炎」といいます。副鼻腔の粘膜に炎症が起こると、そこで大量の粘液が
作り出され、鼻へと溢れ出て黄色い鼻汁になるのです。膿が副鼻腔にたまるので蓄膿症という言われるようになりました。
副鼻腔炎には、急性と慢性の2つのタイプがあります。

 急性副鼻腔炎の症状は、風邪に引き続いて起こり、発熱や頭痛、倦怠感、鼻づまり、黄色い鼻汁が多量に出るなど多彩です。
慢性副鼻腔炎の原因は複雑で、急性炎症の繰り返しや遺伝的体質、鼻の粘膜が厚くなって詰まってしまう肥厚性鼻炎、
扁桃炎、大気汚染などいくつもあります。また、上あごの歯、特に虫歯や周囲の炎症が副鼻腔の中に入り込んだり、飛行機や
潜水で副鼻腔の気圧調整がうまくいかない場合でも起こります。慢性副鼻腔炎は、鼻づまりや粘っこい鼻汁が出る、匂いが
わからない、といった主に鼻の症状が出て、続いて鼻汁が喉にまわり、咽喉の炎症や気管支炎が起こることもあります。
神経症状としては、頭が重い、注意力散漫、記憶力減退がありますが、急性の症状と比べるとそれほど強くはありません。

 副鼻腔炎の予防は、風邪をひかないようにすることです。つまり、気温の変化に合わせて衣服を調節したり、寝冷え、
湯冷めをしないようにして下さい。そして、風邪をひいたら完全に治しましょう。適当な運動で体を鍛えることと、偏食を避け、
栄養に注意して、全身の抵抗力をつけることが、日常生活で心掛けるべき基本事項です。
 甲状腺      
 
 甲状腺は、甲状腺ホルモンを合成、分泌する器官です。身体の成長、発育や新陳代謝に必要不可欠で、精神活動にも重要な
役割を果たしています。甲状腺ホルモンの量は常に一定になるように調節されています。多すぎても少なすぎてもいけません。


【甲状腺はどこにあり、どんな働きをしているの?】

 甲状腺は、喉仏のすぐ下、気管にくっついて います。蝶々が羽を休めて木に止まっているようです。甲状腺ホルモンを血液の
中に送り出し、 全身の細胞に届けて、働け働けとメッセージしてい ます。                     
  何らかの原因で血液中の甲状腺ホルモンが過剰になると、全身の代謝が非常に高まります。その結果、心臓の動悸(頻脈)、
血圧上昇やイライラ、多汗、不眠などの症状が出現します。逆に甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が低下するため身体が
だるい、眠たい、寒がり肌のかさつき、身体のむくみが生じてきます。
  甲状腺ホルモンの原料は食品中のヨードです。日本人はヨードを多量に含む食品(昆布・海藻)を摂取する機会が多く、ヨード欠乏に
なることはまずありません。問題があるのは、むしろ過剰摂取のほうです。健康食品と称して、根昆布を煎じてのむのが
はやっているようですが、これは甲状腺のとって百害あって一利なし。ヨードの大量摂取となってしまいます。普通に味噌汁に
海藻を入れたり、吸い物のだしを昆布で取るのは全く問題ありません。
  次号では甲状腺の病気についてお話ししていきます。
  心理室より PTSD 2     
 
 今回も前回に引き続き心的外傷後ストレス障害(PTSD)についてお話しします。
 トラウマ体験が原因で発病すると言われるこの病気は、単に不安であるとか鬱であるというものとは異なり、一連の特有の
症状があります。
  PTSDについて公式なマニュアルでは次のように述べています。この疾患の基本像は、通常の人間の体験(単なる死別や
慢性疾患、ビジネスの失敗、婚姻上の摩擦のような通常的な体験)からほど遠い、心理的に抑うつされるような出来事に
引き続いて、特徴的な症状がある。これらの症状を生み出すストレッサー(ストレスの原因)はほとんど全ての人に著しい
苦痛を与えるものであり、それを体験すると通常強烈な不安や恐怖、無力感が生ずる。
    
●PTSD特有の症状●

【トラウマを何度も侵入的に再体験する】
 PTSDでもっとも顕著な症状は、本人は思い出したくないのに何度もトラウマを再体験することです。
  ・“過去のことだし、何度考えてもどうにもならない”と分かっていても、しつこく何度も何度も繰り返し意識にのぼり、考えたく
   ないのに当時の出来事を思い出してしまう
   →それが、日中だけではなく寝ているときも思い出され悪夢となります
  ・トラウマを思い出す刺激に触れると、それが今まさに起こっているような錯覚を起こし、全てが洪水のように押し寄せてくる
  ・かつて経験した、トラウマとなった出来事の記念日、例えば終戦記念日など、そのトラウマを象徴する、あるいは
   似たような出来事に遭遇すると強烈な心理的苦痛を感じる

【トラウマを思い起こさせる刺激を避ける】
 トラウマ体験をする前にはなかった反応性麻痺(無感覚)が見られます。
  ・考え方や記憶、意識状態だけではなく明確な目標や行動も狭めてしまい、安全を作り出そうとし、恐怖をコントロール
   するためにその生活さえも狭めてしまう
  ・トラウマを努めて思い出さないようにその刺激から遠ざかる(例えば、事故に遭った人がその事故現場に行かないように
   迂回しようと努める)
  ・トラウマ体験の重要な局面を思い出すことができない(例えば、阪神淡路大震災の被害者がどうやって崩壊した家屋から
   避難所にたどり着いたか思い出せない)
  ・学校や会社という社会的な活動や人間関係から引きこもったり、将来プランが無くなったりする
  ・喜怒哀楽といった感情が乏しくなる
  ・みんなとは違う世界に住んでいるような感じがあり、疎遠感や孤立感がある

【自律神経の興奮や過覚醒の症状がある】
 “逃げるか戦うか”といったような危険な状況にさらされている場合、自分の身を守るため神経を興奮させておく必要があり、
危険時には適応的なこの状態が継続し、安全になったときは、それが興奮や過覚醒という不適応な状態になってしまいます。
(例えば、戦時中の兵士が再来する危険に備えて、周囲の刺激に対し敏感になる。それは危険な状況下にあるときは適応的
ではあるが、安心できる生活に戻ったときには不眠などの不適応な状態になる)
  ・小さな音にも過剰にビックリする
  ・物事に集中できない
  ・眠れなくなったり、寝付きが悪くなったり、連続して眠れなくなったりする

 ベトナム戦争で極限を超える悲惨な体験をした兵隊の精神的後遺症が問題になり、トラウマという言葉が、戦場体験のことを
指すものとして使われるようになりました。後に、同じような症状が性犯罪の被害者や自然災害の被災者にも現れることが
分かり、PTSDという病名が作られました。最近では心の傷やストレスをもトラウマとよぶ傾向があります。
 PTSDの原因は心の領域、精神的な領域の出来事ですが、その結果として脳内にはっきりとした変化が現れることが
分かってきています。トラウマとなる体験を経験した人達には、体験したことの話に耳を傾け、実際的なサポートを提供し、
不安を和らげてくれる他者が必要
となります。